原材料から作るお菓子屋さん、お菓子工房ゴドーです。
お菓子工房を立ち上げたとき、一番最初に大きな問題にぶち当たりました。
それが「賞味期限・消費期限」の設定です。
目次
賞味期限と消費期限の違い
食品の保存期限には二種類あります。賞味期限と消費期限です。
賞味期限とは
劣化が比較的遅い食料品を包装状態のまま所定の環境に置いた状態で、製造者が安全性や味・風味等の全ての品質が維持されると保証する期限を示す日時である。
(賞味期限 Wikipediaより引用)
つまり安全性だけではなくて「味」などの品質も保たれる期限のことです。
一方消費期限とは
製造者が定めた、ある保存方法で概ね5日間経つと品質劣化する長期間保存できない食品の食用可能期限。
(消費期限 Wikipediaより引用)
つまり「この期間を過ぎたら食べられませんよ、という期限のことです。お菓子工房ゴドーでは日持ちのしないお菓子が多いので、消費期限を設定しようということになりました。
消費期限って誰がどうやって決めてるの?
ここで問題となったのが、消費期限を「誰が」「どうやって」決めるのか、ということです。最初は何かしらのガイドラインがあって、「ケーキなら○日、プリンなら○日」といった基準に合わせて設定すればよいものだと考えていました。
しかし法律などを調べてみると次のような記述が。
消費期限又は賞味期限の設定は、食品等の特性、品質変化の要因や原材料の衛生状態、製造・加工時の衛生管理の状態、容器包装の形態、保存状態等の諸要素を勘案し、科学的、合理的に行う必要があります。このため、その食品等を一番よく知っている者
が決めるとあります。
(消費者庁 加工食品の表示に関する共通Q&Aより引用)
つまり、製造者が消費期限を決めなければならない、ということです。いやいや、保健所に聞けば「だいたいこのくらいですよ」って教えてくれるんじゃないの?と思って保健所に確認してみてもやはり回答は「自分で決めてください」とのこと。
じゃあ作って保管してカビが生えたりする前までを消費期限にすればいいのかな?と思うとさらに気になる記述が。
消費期限の設定は「諸要素を勘案し、科学的、合理的に行う必要が」あるということです。
「科学的」とはどういうことでしょう。
これは保存した食品のなかの細菌類が一定以下であることや、油が酸化していないことなどを検査しなければいけないということです(検査項目は食品により異なります)。
これは困りました。
一定期間保存して食べてみて大丈夫かどうか、といった判断なら個人でも下せますが、細菌のチェックなど個人に出来るはずがありません。
「さあお菓子工房の開業だ!」と思って喜んでいたところに、思わぬ壁が立ちふさがったのです。
専門の機関で検査してもらう
仕方が無いので、消費期限設定に必要な科学的検査をしてくれるところを探しました。
民間でやっているところもあるようですが、三原市近郊にはありません。唯一福山市に「広島県環境保険協会」があったので、そちらにお願いすることにしました。
環境保険協会では一般細菌、大腸菌群等、調べてほしい項目を選び、サンプルを二つ持っていって決められた条件で自分の決めた期間検査してもらいます。
サンプルを二つ持っていくのは「そもそも最初から菌が増えていたのか、保存してから増えたのか」が判るようにするためです。
検査料は二週間の保存料金も合わせて二万円強といったところ。これを商品数だけ行うわけですから、想定していなかった痛い出費でした。
毎回検査しないといけないのか?
一度検査に出して消費期限を決められれば晴れて商品を売りに出すことが出来ます。
…が、不安になることが一つ。
それは「商品が増えるたびにこの検査をやらないといけないのか?」ということです。新商品を作るたびに検査をしていたらいつまで経っても赤字です。
気になったので法律などを調べていたら次の記載がありました。
商品アイテムが膨大であったり、商品サイクルが早いなどの理由により、個々の食品ごとに試験・検査をすることが難しい場合は、食品の特性を十分に考慮した上で、その特性が類似している食品の試験・検査結果等を参考にして期限を設定することも可能です。
まとめ
意外と知られていない賞味期限・消費期限の設定方法。まとめると次のとおりです。
- 賞味期限・消費期限は製造者自身で決める必要がある
- 期限の設定には科学的な検査が必要
- 一度検査した結果を参考に消費期限を定めても可
手づくりのお菓子を販売したい!と考えている方は、意外と落とし穴になるようなポイントなのでお役に立てれば幸いです。