【ノーベル文学賞作家】カズオ・イシグロ作品を読んでみました

原材料から作るお菓子屋さん、お菓子工房ゴドーです。

未だ療養中の身なので時間があるときは本を読むようになりました。

今までの自分と違うことをしてみたいという思いもあったので、普段だったら手に取らないような「ノーベル賞受賞作家」の本を読んでみよう、と思い立ちました。

そこで手に取ったのが皆さんもまだ記憶に新しいであろう日系イギリス人作家、「カズオ・イシグロ」氏の作品です。

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目次

購入した本

次の三作品を購入しました。

日の名残り(1989年)

わたしを離さないで(2005年)

忘れられた巨人(2015年)

このうち、「日の名残り」と「忘れられた巨人」を読み終えました。

ざっと読んだ所感

過去に思いを馳せる

カズオ・イシグロ氏の作品は、主人公が過去に思いを馳せることが多いのが特徴だと思います。例えば「日の名残り」では、主人公のスティーブンスがおよそ一週間の旅行に出ている途中途中で、執事として働いていたときの出来事の数々や、その時思い描いた「執事の品格」などについて回想します。

また、「忘れられた巨人」では登場人物のほとんどが過去のことを覚えていない、すぐ忘れてしまうという特殊な状況に置かれています。主人公のアクセルは自分の息子に会いに行くたびの途中でさまざまな人と出会いながら、少しずつ過去を思い出し、過去の自分や妻ベアトリスとの関係に思いを馳せていきます。

この二作品に共通することは、どちらも主人公が旅をしており、その中で過去へ思いを馳せていく、という点です。身体と時間は先へ進んでいきますが、心は過去へ向かっている。

「現在」と「これから」、そして「過去」の出来事の対比で主人公たちの過去に特別な意味合いがあるように描かれているように思えます。

それでいながら、前を向いて生きることに否定的ではありません。私は「日の名残り」の次の箇所が印象に残りました。

(日の名残りより引用)

いいかい、いつも後ろを振り向いていちゃいかんのだ。後ろばかり向いているから、気が滅入るんだよ。何だって?昔ほどうまく仕事ができない?みんな同じさ。いつかは休むときが来るんだよ。わしを見てごらん。引退してから、楽しくて仕方がない。そりゃ、あんたもわしも、必ずしももう若いとは言えんが、それでも前を向きつづけなくちゃいかん

私は現在療養中で、足踏みをするだけで全く前に進めていないと日々焦りを感じていました。カズオ・イシグロ作品の登場人物のように輝かしい過去に思いを馳せることもあれば、「あの時こうしていれば今のような状況にならずに済んだかもしれないのに」と自分を責めることもありました。

しかし焦りやそれが原因で気が滅入ることがあっても、前を向き続けなければならない。そう気付かせてくれた箇所でした。

登場人物への暖かい眼差し

今のところざっと読んだ二作品において、登場人物に対して残酷であったり悲惨な描写というものを見かけませんでした。それどころか読んでいて暖かい気持ちになるような人間描写が多いように感じました。読んでいて疲れるということもなく、(よい意味で)刺激の少ない作品であると感じます。

こんな人におすすめ

  • 日々忙しくて疲れてしまっている人
  • 昔は良かったけど今の自分は…と考えてしまっている人

過去の輝かしい思い出があって今の自分が存在します。「今」もいずれ輝かしく、かけがえのない「過去」となるでしょう。過去に思いを馳せ、今の自分を改めて認識し、その先のことを考えるきっかけになる作品だと感じます。

普段そこまで本を読まない私の、表面的なことしか捉えていないようなつたない書評ですが、読んだ人の心に安らぎを与えてくれる良い本、良い作家だと思います。

是非お手にとってみてほしいです。